2014年5月9日金曜日

第3回ウルトラトレイルマウントフジ(前編)

気づけば5回目の100マイルレースとなった、第3回ウルトラトレイルマウントフジ(UTMF)。

100マイルを一本の線で繋ぐのはそこを通る地域の協力を得なければならず、レース開催に尽力してきた運営の方々の努力には本当に頭が下がる。だから、まずレース開催に関わった全ての方々にお礼が言いたい。

様々な事情で毎年コースが見直され、ルートも距離も累積標高も毎回異なるこのレース。第3回大会の今年は富士山を時計回り、後半に急登の天子山地を往く厳しいコースとなった。

■目標
目標タイムは27時間切り。
UTMF公式HPのトップ選手の通過タイムに係数を掛けて試算した。
ただし、HPのA8 西富士中学校からA9 麓までのラップタイムが異常に速かったので、現実的な時間に試算し直した。

昨年大会では距離が156kmでゴールタイムは29時間ジャストだった。
今年は距離169kmにして累積標高9,500m。富士山2つ半相当の高さを登らなければならない。
しかし今回大会からストック全面禁止、またコースの難易度が上がった上で2時間短縮。自分の成長を織り込んでのアグレッシブな目標設定となった。

達成できる自信はあるかと言われると全くなかったが、狙えるだけの練習をしてきたつもり。
自信はないけど意志はある。意志は。














■装備・食糧 
総重量:4.7kg
周りの仲間の報告から比べると1kg位重め。
でも必須装備と最低限の食糧を詰め込むと、どうしてもこの重さになった。改善の余地はあるのだろうけど。

必要装備
<食糧>
水:1リットル
エナジーバー:500g(2,000kcal)
ジェル:500g(1,200kcal)
クエン酸50g
アミノ酸(メダリスト)4本
スポーツミネラル8個
<装備>
防水ウェア上下
ロングタイツ
手袋
ニット帽子
ライト2個+電池
ファーストエイドキット


















■レース当日
快晴。暖かな空気が会場を包む。
ビアフェスが隣でやってたら走るのをやめてしまいたくなるような陽気。
前日入りした仲間から、夜に雨が降ったことを聞いた。コースの水はけ具合が若干気にはなったが、昨年はスタート直前まで雨が降ってもスリップすることはなかったので、まぁ大丈夫だろう。
3度目の出場なのでだいたいは想像出来る。

会場では多くの仲間と再会し、お互いの健闘を誓い合った。
それぞれに掲げた目標を達成するために。

スタート時間は15時。
30分ほど前からスタートゲートに並ぶ。そこにはタッキーさん、黒田さん、すぽるちばの釘さん、のりさん、ISSEIさん、ナミネムさん。

直前に鏑木さんからコース変更の説明。なんでも、スタート直後のコース幅が極端に狭くなっているとのこと。

スタート時間が近づくにつれ、徐々に人混みの熱気も上がってくる。
15時、待ちに待った号砲が鳴った。






















■START 河口湖八木崎公園~A1 富士吉田(18.2km)
ノロノロと集団が動き出す。
鏑木さんの説明通り、スタート直後は大混雑。スタートゲートはまさに砂時計と化しており、スタートゲートの近くに居たつもりだったけどゲート脇からのランナー達に挟まれ一向に進めず、ゲートを抜けたと思えば今度は道幅二人分の歩道。

千人近くが通るのだから詰まるのも当然。
でもまぁここで飛ばしても意味がない。あと160km以上ある。
飛ばしすぎないよう平均心拍数150bpmを目安に抑えて走る。ナミネムさんと一緒に会話しながら前を行く。

河口湖大橋を渡り湖畔へ。
コース脇の岩場の上には見覚えのある大男が。セカマスさんとサメさん。誰よりも目立つ場所から誰よりも大きな声援をもらった。ありがとうっ!

湖畔にはまだ桜が咲いていて、ピンク色のゲートをしばらく走った。


























レース最初の登り、林道に入ると朽見さん、コッシーさん、ELBさん、ISOさん、タッキーさん、多くの仲間に遭遇。会話を楽しみつつ自分のペースを掴んでいく。

全体のペースが速いので煽られないようにペースを堅持。
それでも自然と身体が前に行ってしまうのだが。

林道を抜けてロードを通過し、そしてようやくトレイル。
ランナーがまばらになってきた。
お祭り気分がようやく終わり、やっとここからようやくトレイルレースを走っていることを実感する。

17:16(目標16:57)、富士吉田到着。
目標タイムから遅れること19分。
うどんを掻き込み、トイレ休憩を経て先に進む。

■A1 富士吉田(18.2km)~A2 二十曲峠(33.4km)
目指すは杓子山(1,597m)。
去年のUTMFは逆回りだったので、レース終盤に杓子山が立ちはだかった。
眠気に苛まれた昼間、複数の偽ピークを経て辿りついた杓子山は辛い思い出だが、今年は序盤も序盤なので怖くない。体力があるうちに登れるというのは、これだけ気分も違う。


























19:37(目標19:07)、二十曲峠到着。
目標から30分遅れているが走れている。でもペースは悪くない。目標が高いだけ。

■A2 二十曲峠(33.4km)~A3 山中湖きらら(39.3km)
石割山を越える6km。
登りは調子良い。大腿筋を上げずに骨盤を上げて登れている。意識は臀筋と薄筋に。
この半年は、登りにおいて「脚を上げない走り」を意識して練習してきた。この動きがだいぶ出来るようになってきたのだと思う。登りが力強く、トルクが増していることを実感した。

補給は30分に1回、手作りのエナジーバーかジェルを摂る。あわせてクエン酸(原料そのままw)を舐める。クエン酸は案の定酸っぱいを通り越して、唇が痛い。腫れるような感覚を覚えながら無理矢理補給した。アミノバイタルの粉をケチって買わなかったから我慢するしかない。

20:26(目標19:49)、山中湖きらら到着。

■A3 山中湖きらら(39.3km)~A4 すばしり(55.7km)
1,000mから1,300m級の複数の山脈地帯に入る。レース開始から6時間経過して徐々に疲労が来ている。普段から1日単位のロング練習が出来ていないので、このあたりからパフォーマンスが落ちる。でも身体はしっかり動いている。
急登では「手を後ろで繋いで歩く」ランナーを見た。前傾する上体を後ろ手でうまくバランスを取り、姿勢がピンと伸びている。腰が曲がると体幹に余計負担が掛かるので、なるほど合理的な登り方かもしれない。自分も真似て登ってみることにした。

後方からISOさん。自分が先行しているなど普段有り得ないことなのだが。
「良くなってる!」骨盤上げて登る姿を誉めていただいた。意識して練習してきたことだけあって、とても嬉しかった。

22:53(目標22:16)、すばしり到着。

■A4 すばしり(55.7km)~A5 富士山御殿場口太郎坊(65.6km)
すばしりを出ると、去年までは長い直線ロードを登っていくのだが、今年はトレイルに迂回する。景色が変わらない無限地獄のようなロードよりはトレイルの方が数倍良い。砂礫の道に入ると数人の集団に追い付く。自分の疲労が色濃くなってきたが、自分よりも集団の方がペースが落ちて来ている。みんな苦しいのだ。

0:46(目標23:47)、富士山御殿場口太郎坊到着。

■A5 富士山御殿場口太郎坊(65.6km)~A6 水ヶ塚公園(71.5km)
砂礫を降りきると、一転ロードに。
登り基調のロードで景色に変化もないのでまさに単調。第1回大会ではこの場所で幻覚を見た。カラーコーンがおばあちゃんに見えたのだ。今年は幸い眠気に襲われることはなく、おばあちゃんも現れなかった。されどこの6kmは非常に長い道のりに感じられた。

1:33(目標0:43)、水ヶ塚公園到着。

■A6 水ヶ塚公園(71.5km)~A7 富士山こどもの国(80.5km)
さすがに眠くなって来たので、エイドでコーヒー投入。あっという間に眠気が吹き飛んだ。レース前にカフェイン絶ち、まではいかなかったが減らすことは出来たので、効き目があったようだ。

エイドではスタッフの方が売り子さんばりに「食糧要らんかね~」と声を掛けてくれる。
水ヶ塚と言えばカツバーガーである。これを食べないとUTMFを走った甲斐がない。でも今食べる食欲はなかったため、テイクアウトを依頼。半分に切ったものを包んでくれた。ドライブスルー、いやランニングスルー方式のお持ち帰りだ。パン4個とカツバーガーをポケットに入れて出発。
胃袋は元気。100マイルレースは、筋肉だけでなく内臓だって戦っている。

ロードをしばらく走るとスキー場に入る。
春のゲレンデを下る。窪みが所々にあるので捻挫しないように気をつける。
ところが、不意にコーステープが消えた。昔の記憶だとゲレンデをいくつか降りてったようなイメージがあったが、見回しても何もない。ロストか?
後続の外国人選手も辺りを見回している。自分の視界にはコースはない。
諦めて引き返してみるとゲレンデを降りきる前に左折を促すテープがあった。結局、15分ほど浪費してしまった(泣)

気を取り直してコースに復帰する。

こどもの国に入る砂利道を下っていると、入れ替わりでナミネムさんが力強く登っていく。ハイタッチしようと手を出してくれたが、気付くのが遅くて間に合わなかった(o_ _)o


























3:01(目標2:09)、富士山こどもの国到着。

■A7 富士山こどもの国(80.5km)~W1 粟倉(94.9km)
ここでちょうどコース半分。ドロップバックを受け取る。でも、エナジーバーもジェルもまだ余っているので、空のジェルフラスコ2本をバックに戻しただけで補充はしなかった。エイドの食糧だけで十分賄える。

5分程度でエイドを出発。
しかし、エイドを出た直後にハンドライトがないことに気付く。
エイドで荷物交換をしている時にベンチに置き忘れたことを思い出した。危ない。
レギュレーション上、ライトが2つないと違反になるので気付いて良かった。というかエイド出る前に自分で気付けよなんだけど...(汗)
時間計測用のマットを2回踏まないように避けて取りに行った。

こどもの国から粟倉まではゆるやかな下り基調の林道。
この区間は比較的得意なコース。砂利道で単調でロードの脚力を求められるのでグイグイ押していく。とはいえ傾斜に任せて前進するほどではないので、やはり身体を使って進まねばならない。前後のランナーは見えずぼっちラン。そんな中でも後方からひたひたと走るランナーに抜かれて行く。決して悪くはないペースなのだけど...スタミナの問題か。
それでも20位ほど順位を上げる。

4:49(目標4:13)、粟倉到着。
目標タイムまで30分に迫った。

■W1 粟倉(94.9km)~A8 西富士中学校(104.4km)
この区間は鉄塔下のトレイルを往く10km。幾重にも続く鉄塔、小刻みなアップダウン。行けども行けども鉄塔はなくならない。進んでいないかのような錯覚に陥る。肌寒い朝、ランナーを一人パスしてからずっとひとり人旅。


























この区間は日除けがないので、日中走るのは相当酷だろう。第1回大会では直射日光をモロに浴びながら走った思い出がある。100マイルレースはコースだけでなく通過する時間帯によっても難易度?過酷度が変わってくる。

6:16(目標5:37)、西富士中学校到着。

ここまで104kmを走り、残すところあと65km。
現時点でサブ27時間から約40分遅れ。

ここからが正念場、最難関の天子山地越えが待っている。
(後編に続く)