2014年5月9日金曜日

第3回ウルトラトレイルマウントフジ(前編)

気づけば5回目の100マイルレースとなった、第3回ウルトラトレイルマウントフジ(UTMF)。

100マイルを一本の線で繋ぐのはそこを通る地域の協力を得なければならず、レース開催に尽力してきた運営の方々の努力には本当に頭が下がる。だから、まずレース開催に関わった全ての方々にお礼が言いたい。

様々な事情で毎年コースが見直され、ルートも距離も累積標高も毎回異なるこのレース。第3回大会の今年は富士山を時計回り、後半に急登の天子山地を往く厳しいコースとなった。

■目標
目標タイムは27時間切り。
UTMF公式HPのトップ選手の通過タイムに係数を掛けて試算した。
ただし、HPのA8 西富士中学校からA9 麓までのラップタイムが異常に速かったので、現実的な時間に試算し直した。

昨年大会では距離が156kmでゴールタイムは29時間ジャストだった。
今年は距離169kmにして累積標高9,500m。富士山2つ半相当の高さを登らなければならない。
しかし今回大会からストック全面禁止、またコースの難易度が上がった上で2時間短縮。自分の成長を織り込んでのアグレッシブな目標設定となった。

達成できる自信はあるかと言われると全くなかったが、狙えるだけの練習をしてきたつもり。
自信はないけど意志はある。意志は。














■装備・食糧 
総重量:4.7kg
周りの仲間の報告から比べると1kg位重め。
でも必須装備と最低限の食糧を詰め込むと、どうしてもこの重さになった。改善の余地はあるのだろうけど。

必要装備
<食糧>
水:1リットル
エナジーバー:500g(2,000kcal)
ジェル:500g(1,200kcal)
クエン酸50g
アミノ酸(メダリスト)4本
スポーツミネラル8個
<装備>
防水ウェア上下
ロングタイツ
手袋
ニット帽子
ライト2個+電池
ファーストエイドキット


















■レース当日
快晴。暖かな空気が会場を包む。
ビアフェスが隣でやってたら走るのをやめてしまいたくなるような陽気。
前日入りした仲間から、夜に雨が降ったことを聞いた。コースの水はけ具合が若干気にはなったが、昨年はスタート直前まで雨が降ってもスリップすることはなかったので、まぁ大丈夫だろう。
3度目の出場なのでだいたいは想像出来る。

会場では多くの仲間と再会し、お互いの健闘を誓い合った。
それぞれに掲げた目標を達成するために。

スタート時間は15時。
30分ほど前からスタートゲートに並ぶ。そこにはタッキーさん、黒田さん、すぽるちばの釘さん、のりさん、ISSEIさん、ナミネムさん。

直前に鏑木さんからコース変更の説明。なんでも、スタート直後のコース幅が極端に狭くなっているとのこと。

スタート時間が近づくにつれ、徐々に人混みの熱気も上がってくる。
15時、待ちに待った号砲が鳴った。






















■START 河口湖八木崎公園~A1 富士吉田(18.2km)
ノロノロと集団が動き出す。
鏑木さんの説明通り、スタート直後は大混雑。スタートゲートはまさに砂時計と化しており、スタートゲートの近くに居たつもりだったけどゲート脇からのランナー達に挟まれ一向に進めず、ゲートを抜けたと思えば今度は道幅二人分の歩道。

千人近くが通るのだから詰まるのも当然。
でもまぁここで飛ばしても意味がない。あと160km以上ある。
飛ばしすぎないよう平均心拍数150bpmを目安に抑えて走る。ナミネムさんと一緒に会話しながら前を行く。

河口湖大橋を渡り湖畔へ。
コース脇の岩場の上には見覚えのある大男が。セカマスさんとサメさん。誰よりも目立つ場所から誰よりも大きな声援をもらった。ありがとうっ!

湖畔にはまだ桜が咲いていて、ピンク色のゲートをしばらく走った。


























レース最初の登り、林道に入ると朽見さん、コッシーさん、ELBさん、ISOさん、タッキーさん、多くの仲間に遭遇。会話を楽しみつつ自分のペースを掴んでいく。

全体のペースが速いので煽られないようにペースを堅持。
それでも自然と身体が前に行ってしまうのだが。

林道を抜けてロードを通過し、そしてようやくトレイル。
ランナーがまばらになってきた。
お祭り気分がようやく終わり、やっとここからようやくトレイルレースを走っていることを実感する。

17:16(目標16:57)、富士吉田到着。
目標タイムから遅れること19分。
うどんを掻き込み、トイレ休憩を経て先に進む。

■A1 富士吉田(18.2km)~A2 二十曲峠(33.4km)
目指すは杓子山(1,597m)。
去年のUTMFは逆回りだったので、レース終盤に杓子山が立ちはだかった。
眠気に苛まれた昼間、複数の偽ピークを経て辿りついた杓子山は辛い思い出だが、今年は序盤も序盤なので怖くない。体力があるうちに登れるというのは、これだけ気分も違う。


























19:37(目標19:07)、二十曲峠到着。
目標から30分遅れているが走れている。でもペースは悪くない。目標が高いだけ。

■A2 二十曲峠(33.4km)~A3 山中湖きらら(39.3km)
石割山を越える6km。
登りは調子良い。大腿筋を上げずに骨盤を上げて登れている。意識は臀筋と薄筋に。
この半年は、登りにおいて「脚を上げない走り」を意識して練習してきた。この動きがだいぶ出来るようになってきたのだと思う。登りが力強く、トルクが増していることを実感した。

補給は30分に1回、手作りのエナジーバーかジェルを摂る。あわせてクエン酸(原料そのままw)を舐める。クエン酸は案の定酸っぱいを通り越して、唇が痛い。腫れるような感覚を覚えながら無理矢理補給した。アミノバイタルの粉をケチって買わなかったから我慢するしかない。

20:26(目標19:49)、山中湖きらら到着。

■A3 山中湖きらら(39.3km)~A4 すばしり(55.7km)
1,000mから1,300m級の複数の山脈地帯に入る。レース開始から6時間経過して徐々に疲労が来ている。普段から1日単位のロング練習が出来ていないので、このあたりからパフォーマンスが落ちる。でも身体はしっかり動いている。
急登では「手を後ろで繋いで歩く」ランナーを見た。前傾する上体を後ろ手でうまくバランスを取り、姿勢がピンと伸びている。腰が曲がると体幹に余計負担が掛かるので、なるほど合理的な登り方かもしれない。自分も真似て登ってみることにした。

後方からISOさん。自分が先行しているなど普段有り得ないことなのだが。
「良くなってる!」骨盤上げて登る姿を誉めていただいた。意識して練習してきたことだけあって、とても嬉しかった。

22:53(目標22:16)、すばしり到着。

■A4 すばしり(55.7km)~A5 富士山御殿場口太郎坊(65.6km)
すばしりを出ると、去年までは長い直線ロードを登っていくのだが、今年はトレイルに迂回する。景色が変わらない無限地獄のようなロードよりはトレイルの方が数倍良い。砂礫の道に入ると数人の集団に追い付く。自分の疲労が色濃くなってきたが、自分よりも集団の方がペースが落ちて来ている。みんな苦しいのだ。

0:46(目標23:47)、富士山御殿場口太郎坊到着。

■A5 富士山御殿場口太郎坊(65.6km)~A6 水ヶ塚公園(71.5km)
砂礫を降りきると、一転ロードに。
登り基調のロードで景色に変化もないのでまさに単調。第1回大会ではこの場所で幻覚を見た。カラーコーンがおばあちゃんに見えたのだ。今年は幸い眠気に襲われることはなく、おばあちゃんも現れなかった。されどこの6kmは非常に長い道のりに感じられた。

1:33(目標0:43)、水ヶ塚公園到着。

■A6 水ヶ塚公園(71.5km)~A7 富士山こどもの国(80.5km)
さすがに眠くなって来たので、エイドでコーヒー投入。あっという間に眠気が吹き飛んだ。レース前にカフェイン絶ち、まではいかなかったが減らすことは出来たので、効き目があったようだ。

エイドではスタッフの方が売り子さんばりに「食糧要らんかね~」と声を掛けてくれる。
水ヶ塚と言えばカツバーガーである。これを食べないとUTMFを走った甲斐がない。でも今食べる食欲はなかったため、テイクアウトを依頼。半分に切ったものを包んでくれた。ドライブスルー、いやランニングスルー方式のお持ち帰りだ。パン4個とカツバーガーをポケットに入れて出発。
胃袋は元気。100マイルレースは、筋肉だけでなく内臓だって戦っている。

ロードをしばらく走るとスキー場に入る。
春のゲレンデを下る。窪みが所々にあるので捻挫しないように気をつける。
ところが、不意にコーステープが消えた。昔の記憶だとゲレンデをいくつか降りてったようなイメージがあったが、見回しても何もない。ロストか?
後続の外国人選手も辺りを見回している。自分の視界にはコースはない。
諦めて引き返してみるとゲレンデを降りきる前に左折を促すテープがあった。結局、15分ほど浪費してしまった(泣)

気を取り直してコースに復帰する。

こどもの国に入る砂利道を下っていると、入れ替わりでナミネムさんが力強く登っていく。ハイタッチしようと手を出してくれたが、気付くのが遅くて間に合わなかった(o_ _)o


























3:01(目標2:09)、富士山こどもの国到着。

■A7 富士山こどもの国(80.5km)~W1 粟倉(94.9km)
ここでちょうどコース半分。ドロップバックを受け取る。でも、エナジーバーもジェルもまだ余っているので、空のジェルフラスコ2本をバックに戻しただけで補充はしなかった。エイドの食糧だけで十分賄える。

5分程度でエイドを出発。
しかし、エイドを出た直後にハンドライトがないことに気付く。
エイドで荷物交換をしている時にベンチに置き忘れたことを思い出した。危ない。
レギュレーション上、ライトが2つないと違反になるので気付いて良かった。というかエイド出る前に自分で気付けよなんだけど...(汗)
時間計測用のマットを2回踏まないように避けて取りに行った。

こどもの国から粟倉まではゆるやかな下り基調の林道。
この区間は比較的得意なコース。砂利道で単調でロードの脚力を求められるのでグイグイ押していく。とはいえ傾斜に任せて前進するほどではないので、やはり身体を使って進まねばならない。前後のランナーは見えずぼっちラン。そんな中でも後方からひたひたと走るランナーに抜かれて行く。決して悪くはないペースなのだけど...スタミナの問題か。
それでも20位ほど順位を上げる。

4:49(目標4:13)、粟倉到着。
目標タイムまで30分に迫った。

■W1 粟倉(94.9km)~A8 西富士中学校(104.4km)
この区間は鉄塔下のトレイルを往く10km。幾重にも続く鉄塔、小刻みなアップダウン。行けども行けども鉄塔はなくならない。進んでいないかのような錯覚に陥る。肌寒い朝、ランナーを一人パスしてからずっとひとり人旅。


























この区間は日除けがないので、日中走るのは相当酷だろう。第1回大会では直射日光をモロに浴びながら走った思い出がある。100マイルレースはコースだけでなく通過する時間帯によっても難易度?過酷度が変わってくる。

6:16(目標5:37)、西富士中学校到着。

ここまで104kmを走り、残すところあと65km。
現時点でサブ27時間から約40分遅れ。

ここからが正念場、最難関の天子山地越えが待っている。
(後編に続く)

2013年10月25日金曜日

第21回日本山岳耐久レース(後編)

第2CP月夜見、5:58到着。

月夜見のウォーターエイドでポカリスエットを補給。
装備していた水は3リットルあったが、ハイドレにあるメダリストを1リットル、OS1ジェルを0.4リットルを消費しただけで半分以上余っていた。

ここで補給しないという選択肢もあったが、不意の脱水、水漏れ等何が起こるか分からないため、いつものようにボトル満杯になるまで補充し、入らない分はその場で0.3リットルほど飲んだ。

ちょうど隣でチーム100マイルの松村さんと一緒になる。
足の具合が良くないが走れている様子。お互いサブ10を目指しているので一緒にいると気合が入る。
補給を終え、滞在時間2分程度で御前山へ向かう。

3.月夜見→長尾平(58km)
月夜見を出て最初の坂を駆け下り、下り基調のシングルトラックを走る。
ここから先はほぼ全区間、攻めに転じる計画だ。

しかし動作は裏腹に。
補充したてのパックがやや重かったが、それよりも身体が重く感じる。
さきほど一気飲みしたからか。それとも前半の疲労が出て来たのか。
ギアチェンジしてスピードに乗るべきところで乗れない。


























先ほどまで一緒にいた松村さんは前方に行ってしまった。

マズい。ペースが上がらない。
小河内峠を越えて御前山(46.57km)への登りに入っても状況は変わらず。

攻めるというより耐える走りでなんとか御前山到着。
サブ9.75目標:6:43、実績6:51。大きく差が開いてしまった。

御前山を下って大ダワ(49.77km)へ
去年よりはペースアップしているものの、今年の目標には到底及ばない。
つづら折りの坂はコーナーをアウトサイドからインサイドに抜けるのが有効だが、曲がりきれないクルマのようにやや大回りに抜けていく。急ぐあまり周囲を見渡す余裕がない。

大ダワ到着。サブ9.75目標:7:12、実績7:24。
9時間45分から12分も遅れてしまった。

後退する一方のタイム、サブ10も危ない状況になってきた。

脳裏にゴール後のシーンが浮かんでくる。
サブ10出来なかった自分、仲間から惜しかったねと労われる光景。
残念だったけどよくここまで頑張ったと言われる。肩を落としつつもPBでしぶしぶ納得する自分の姿。

一瞬、この世界に浸りそうになった。
そういう事を想像するのは、辛くてもプッシュしなければならない状況で逃げ出したい気持ちになっていたからかもしれない。妥協の産物。

我に還った。
まだ終わったわけじゃない。

9時間45分の目標から、現実的なサブ10死守の設定に切り替えた。

残るは最後のボス、大岳山(53.71km)である。
太岳山頂までは急登な岩場、だけど距離は短い。ここでも歯を食いしばって自分をプッシュしていくしがない。何人かのランナーにパスされつつも自分の行ける最速のペースを維持する。

このあたりはサブ10を意識しているランナーが多く、たまにサブ10行けるかどうかの会話になる。「ギリギリですね~、頑張りましょう!」と答えた。

大岳山到着。
サブ10から6分の貯金。なんとかサブ10圏内を維持する。残り15kmで6分の貯金があるのは心理的に大きい。

大岳山からは下り基調で第3CP長尾平へ。岩場を駆け下りていく。
そして間もなくフラットなダブルトラックに入り、さらにペースを上げる。

タイム的にはそろそろ長尾平に到着する頃なのだけど、まだ何も見えない。設定タイムが高すぎたか、トップスピードで走っていても想定しているタイム内に到着しない。

6分のマージンが徐々に削られていく。

第3CP長尾平到着。

サブ10目標:8:32、実績:8:33。
6分のマージンは幻だった。区間タイムの設定が高過ぎたようだ。
サブ10の貯金はゼロ、いよいよ後が無い。

ここからゴールまで13km。
去年は1時間27分で走った。セブンさんとかなり飛ばした記憶がある。
そのペースで走ってギリギリ9時間59分台。もし何かトラブルが起きたらアウトだ。

崖っぷちの状況。
ここまで来たらやるしかなかった。
長尾平を出ると一気にロングスパートを掛けた。

今やらないときっと後悔する。

御岳山の旅館街。
いつもならようやく人里に帰ってきたという気持ちになれたが、今回はその余裕はなかった。
再びトレイルに入る。

下り基調の中にも小刻みな登りはあるが全部走る。ここで苦しまなかったら、ゴール後に悔しさを味わうだけ。

「絶対に、絶対にやってみせる」念仏のように唱えた。
頭の中は血の気で赤く染まっていた。

ラスト唯一のピーク、日の出山。
登りでひとりのランナーに会う。
苦しそうな様子。その方もサブ10を目指している。

「絶対にサブ10やってやりましょう!」
それは同時に自分への掛け声でもあったかもしれない。

無我夢中。
大腿筋が軋み、呼吸は大きくなる。

金毘羅尾根を下り、アスファルトの路面に入るとさらにスピードを上げる。
ラスト2km、女子4位の外国人選手をパスした。

時計を見ると9:45頃。あと1km強。
サブ10は確実、頑張れば9:50切りを狙える。
下りの勢いを維持したままに平地を走り抜け、ゴールゲートに身体を放り込んだ。



















9時間49分58秒。

サブ10。
1年前にこの場で宣言したことが実現した。

夢のように遠い存在だった目標を、狙いに行って掴み取ることが出来たのが何より嬉しかった。

ロングスパートの代償か、ゴールしてから1時間は息が整わなかった。


■タイムチャート振り返り
















第2CPの月夜見までの前半は耐えて後半攻める作戦だったが、後半思うように伸びず苦戦を強いられた。考えられる点は2つ。
・後半攻めるだけの余力がなかった。→実力不足
・月夜見のウォーターエイドでポカリをがぶ飲みした →急激な補給による変調

第3CPからスパートを掛けることが出来たことを考えると、脚が残っていなかった訳ではなく単に登り区間で登りの出力が足りなかっただけかもしれない。
登りでの出力強化と効率的な走り方をもっと身に着けなければならない、そう改めて思った。

■順位(合計、区間別)












9時間45分からサブ10ランナー(91位まで)のタイムを並べつつ自分の順位を比較してみた。
黄色いセルが自分。
スタートから第1(73位)、第1から第2(99位)、第2から第3(90位)、第3からゴール(60位)という結果に。
区間毎のムラは以前よりはだいぶ少なくなってきたものの、三頭山、御前山、大岳山がある第1から第3までの順位は若干落ちている。サブ10ぎりぎりもしくは圏外のペースだ。
数値でもわかるように登りの出力強化と効率化は課題であることがはっきり分かる。

加えて、最近成長していない下りの上達にも取り組んでいきたいと思う。

■消費
  携行 消費
食糧 1個あたり 個数 合計   個数 合計  
エナジージェル 165 12 1980 kcal 8 1320 kcal
アミノバイタル 18 16 288 kcal 8 144 kcal
トレイルミックス 160 2 320 kcal 0.5 80 kcal
スポーツミネラル 10 6 60 kcal 0 0 kcal
メダリスト 53 5 265 kcal 0 0 kcal
しそ梅 49 1 49 kcal 0 0 kcal
OS1 10 2 20 kcal 2 20 kcal
2982 kcal 1564 kcal

リットル  個数  合計   個数  合計
ハイドレ(メダリスト) 1.5 1 1.5 リットル 0.8 1.15 リットル
ボトル(メダリスト) 0.6 2 1.2 リットル 0 0 リットル
OS1ジェル 0.2 2 0.4 リットル 2 0.4 リットル
ポカリ(月夜見補給) 1.5       0.8 1.15 リットル
3.1 リットル 2.7 リットル

暑くなると予想して水は多めに持って行ったが、多過ぎたと思う。
保険を加味して2.5リットルで十分だった。
OS1ジェルはナミネムさんからアドバイスいただき持参。身体への吸収率が良く、しかも消費後はパックが嵩張らないので非常に有効だった。次回以降のレースでも積極的に使おうと思う。

■次に向けて
今年の大きな目標だったサブ10は達成したが、まだまだ課題はあると思った。
課題を見つけ解決していくことが、私にとって走る楽しさのひとつでもある。

自分の限界に挑戦する意思がある限り、これからも前を向いて進んでいきたいと思う。

2013年10月22日火曜日

第21回日本山岳耐久レース(前編)

またとない晴天となった第21回日本山岳耐久レース。
またの名を長谷川恒夫CUP。通称ハセツネ。

2時間の電車移動を終え、武蔵五日市駅を降りると、会場に向かう道は暖かい陽気。
そのせいかレース直前の緊張感はなく、どことなく穏やかな気持ちになれた。
緩やかに登るこの道を歩きながら、この日まで自分がやってきたことをぼんやりと思い返していた。

■2012年ハセツネ

10時間46分
自己ベストを45分更新。
初めてのサブ11。

もうこれ以上のタイムは自分の能力では出せないだろうと思った。
今まで11時間中盤を行ったり来たりしていた自分が全力を振り絞って出したタイムだったから。
けど、同時にこうも思った。

「サブ10を達成する。」

サブ10とは、ハセツネのコース71.5km、累積標高4,500mを10時間以内で完走すること。
例年、参加者2,200人のうち、上位3~4%のランナーがゴールするタイムである。

これは出来る出来ないの話ではなく、
サブ10まであと47分という位置まで近づいて初めて「サブ10の挑戦権」を
手にしたような気がしたから。
権利があるなら思い切ってぶつかって行くしかない。

ゴールして早々、サブ10を宣言した。
何の勝算もなく、気持ちだけで。

■鍛錬の日々

サブ10は、気持ちだけでは走れない。
だから、自分が今足りないことを洗い出し、課題に取り組んだ。

1)登り克服
これは永遠のテーマ。克服するには登るしかない。
走行距離は600kmを踏んでいるものの、トレイルは練習全体の2割くらいしか走れていなかったので、ハセツネ直後から練習の場を鎌倉トレイルに変更した。これなら毎日トレイルを走れる。
また、負荷に耐える力をつけるために普段の練習でも2リットルの水を入れたパックを背負った。

2)更なる全身持久力の強化
言い換えると長時間高いレベルで活動を続ける力。
今までの100マイルレースを通して全身持久力はある程度持ってはいると思っているが、 高い出力を維持するにはまだ課題があると思っていた。

全身持久力は最大酸素摂取量が関係している。
最大酸素摂取量とは、1分間に取り込まれる酸素の最大量。 全身持久力を強化するには酸素摂取量の高い、つまり強度の高い練習をおこなう必要がある。
ペース走主体の練習方法を見直し、坂ダッシュ等短期的に自分を追い込むメニューを取り入れた。

3)体脂肪削減
体重64kg、体脂肪率は12~15%。
自分にとって好きなものを好きなだけ食べることは、ある意味聖域。
多くのアスリートが10%を切っている中では脂肪が多い方である。
「食事は活力だ」なんて言い聞かせながら自由奔放に食べて来たが、仮に体脂肪を5%落とすことが出来たら体重は3kg強減ることになる。軽量は魅力。走る上で体重は軽い方がいい。

そこで無理のない範囲で6月から食事制限開始。夕飯のご飯を3杯から1杯に減らした。
体脂肪を5~8%台まで落とすことが出来た。

やれることは沢山あった。

効果はすぐには表れなかったが、徐々にレース結果として芽を出してきた。
4月UTMFで29時間完走、7月おんたけウルトラ100マイルでサブ20時間総合6位の結果を残すことが出来た。

特におんたけウルトラ100マイルでは、自分が場違いなほど上位でレース展開を行い、肉体的に辛い場面でもプッシュし続ける精神力がついた。今までは辛い場面になると楽なペースに逃げ込んでしまいがちだったが、レースを戦うための大事な気持ちを身につけることが出来たと思う。

気持ちだけではどうにもならないが、気持ちが欠かせない場面がきっと来る。

■当日の装備



















いつもの野人装備。
そして食糧と水は以下の通り。

食糧 1個あたりkcal    個数       合計
エナジージェル 165 12 1980 kcal
アミノバイタル 18 16 288 kcal
トレイルミックス 160 2 320 kcal
スポーツミネラル 10 6 60 kcal
メダリスト 53 5 265 kcal
しそ梅 49 1 49 kcal
OS1ジェル 10 2 20 kcal
      2982 kcal


     リットル    個数         合計
ハイドレ(メダリスト) 1.5 1 1.5 リットル
ボトル(メダリスト) 0.6 2 1.2 リットル
OS1ジェル 0.2 2 0.4 リットル
3.1 リットル

レース前にOS1のペットボトルを1リットル飲み干し、体内水分を確保。
Ultraspireのボトルホルダー付ウェストベルトは迷った挙句使わず、薄いベルトに変更。

■目標タイム




















目標はサブ10。
だけどサブ10ペースギリギリで行くと全く余裕が無くなるので、保険を掛けて9時間45分切りのペースを設定した。また、今まではCP毎の設定タイムしか出していなかったが、kegさんのハセツネ攻略マップやナミネムさんのアドバイスを元に主要ポイント毎までブレイクダウンした。
第2CPの月夜見までは脚力を温存し、後半攻めまくる戦略。ただし、もともとのペースが速いので月夜見までの設定タイムも過去最速。いずれにしても、自分にとってはレース全般気を抜くことが出来ない設定となっている。

■レース前

野人の仲間とレース会場の体育館で合流。
今年はチームウェアで参戦することが出来、皆で盛り上がった。
思えばもともと、年1回ハセツネで出会う仲間の輪が徐々に広がり、日本野人の会というチームとなった。だからハセツネにはみんな特別な思いがある。




















他にも体育館には多くのトレラン仲間がおり、お互いの健闘を誓い合う。
会う仲間会う仲間から「絞ったなぁ」と言われた。そう言う皆も相当絞れている。
皆がハセツネに向けて照準を合わせて来ていることをひしひしと感じた。

12時、スタート1時間前になると、それぞれの目標に向かってスタート地点へ向かった。

■レース展開
1.スタート→浅間峠(22.66km)
13時、号砲とともに選手がスタートラインから雪崩出した。
幸いにも前方に位置することが出来たので、スタートからのロスは30秒ほど。

歓声に包まれながら、選手の間を縫うように先を急ぐ。
ここから今熊神社まではダッシュ区間。スタート地点から右折し暫くするとOSJのドン、タッキーさんがいた。お互いのサブ10達成を誓いつつ、先を行かせていただいた。

身体が軽い。アスファルト区間は飛ぶように走る。みんなダッシュに近いペースで走っているのだけれども、それでも周りが自分の後方に吸い寄せられていく。

今熊神社に到着。
ハイカーの方が教えてくれた順位によると100番手あたり。スタートの混雑から抜け出し、だいたい順当な位置に来たと思った。
今熊神社に入ってすぐのトレイルでは、左右の分岐がある。右は本線で混んでいて、左は尾根で走れる数百メートルの区間。毎年右側を走ってしまい歩きを余儀なくされるのだけど、今年もまんまと無意識に右側を選んでしまった。気付いた時には既に遅し。尾根を走る先ほど追い抜いたランナー達に再び抜かれてしまった。自分、学習してないな。。。

小刻みなアップダウン、急登とランナーに揺さぶりを掛けるようなコース。
今まで自分が苦手としていた急登、膝に手を当てそう悪くないペースで登る。

ここでチーム100マイルの庄司さん、小林さんに遭遇。
急登なのに負荷が全くないような軽やかな足取りで上空まで登って行く。さすが馬力が違う。

入山峠(7km)到着。サブ9.75目標:0:53、実績:0:48。
5分貯金。いいペースで入ることが出来た。



















市道分岐(11.7km)から醍醐丸(15.29km)までの区間は、フラットな路面から始まり急登。
例年ペースが鈍る場所なので、意識してペースを落とさないようにする。
第2CPまでは脚を温存、勝負はこれから。

醍醐丸(15.29km)。サブ9.75目標:1:52、実績:1:57
いきなり5分のビハインド。サブ10目標の通過タイムも1:55だったので焦る。

次の第1CP浅間峠(22.66km)までには何とか巻き返さないとならない。
去年の自分より10分速いペースで進んでいるものの、これがサブ10の厳しさか。。

ジェルを30分おきに少量飲み、水分を補給する。
天候は思ったほど暑くない。トレイルに入ればむしろ涼しいほどだが、補給は腹が減る、喉が渇く前にこまめに採る。

巻き返しを図るべくペースを上げる。
心拍数は145bpm程度。ペースを上げても心拍は上がらない。余裕がある証拠。
浅間峠に到着。サブ9.75目標:3:01、実績:2:54
なんとか軌道修正。区間タイムを細かく設定したお陰で早めの対処が出来た。



















CPからの登りでは多くの方から応援をいただいた。
ハセツネには食糧エイドはないけれども、応援は何よりも有難い気力のエイドだ。

2.浅間峠→月夜見(42.09km)
この区間のポイントは三頭山(36.32km)までの登り。
タイムチャートに記載した通り、辛いのを耐え忍ぶ区間。
ここでペースを維持できないとサブ10は夢の彼方へ消え去ってしまう。

喰らいつくように走った。
苦しい登りを歩かず走る。
鏑木さんからアドバイスしてもらった「膝を曲げない登り」を意識しながら。
でも出来てるような出来ていないような。
会得と言うには程遠い状況だが、それでもペースは維持出来ている。

三頭山(36.32km)到着。サブ9.75目標:5:02、実績:5:03
なんとかオンタイム。昨年の自分より30分速いペース。

ペースが速いと苦しさが増す分、苦しむ時間も短い。
昔は三頭山までの登りは、延々と続く無間地獄のように感じていたが、それとはだいぶ違う感覚だった。サクッと苦しみサクッと終わる。そう考えると多少なりとも気が楽になった。

ここからは下り基調。
手を抜いてる訳ではないけど、下りは昨年から大きな進歩はない。
もともと下りは得意分野だったが、歳をとって捻挫が怖くなったせいか、身体が固くなったせいか、今はドタバタと無様な走りをしてしまう。

ここ数年は登り克服に注力して来たので、下りの強化はまた今度。

大きなペースアップもロスも無く、第2CP月夜見(42.09km)到着。サブ9.75目標:5:54、実績5:58

ここからは御前山(46.57km)、大岳山(53.71km)と二大ボスとの戦い。
目標達成にはさらなるペースアップが求められる区間。
しかし、ここで大いに苦しむことになる。

(後編に続く)